関西カルチェラル・スタディーズ若手研究会(仮称) 「サッカー選手の移動経路からみるJリーグ──外国人選手たちは、どこから来て、どこへ行くのか?」のご報告

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    こんにちは。カルチュラルタイフーン2011ブース・パフォーマンス部門担当の藤墳智史(ふじつか・さとし)です。よろしくお願いします。5月21日(土)の第8回会議の後に行われた「関西カルチェラル・スタディーズ若手研究会」のご報告です。

    今回は山本敦久さん(筑波大学)をゲストにお招きして、「サッカー選手の移動経路からみるJリーグ──外国人選手たちは、どこから来て、どこへ行くのか?」というタイトルでお話をいただきました。

    さて、Jリーグは1993年の開幕以来、プロ・サッカーのナショナル・リーグであるとともに、日本全国の各地域を地盤に、サッカーを通じて地域単位でスポーツを軸とした文化を確率することが標榜されてきました。このことは「百年構想」等でも触れられており、ご存じの方も多いと思います。

    しかし、少し見方を変えれば外国籍の選手たちのJリーグへの参入とそこでの活躍は欠かせないものでもありました。ジーコ、リトバルスキー、ブッフバルト、レオナルド、ドゥンガ、エムボマ、ストイコビッチ、パク・チソン…etc、印象に残る外国籍選手は沢山います。各地域のチームも選手たちの移動の流れにさらされており、多くのチームが外国籍の選手たちに支えられています。プロ・サッカー選手たちのグローバルな移動の経路に組み込まれてはじめて、ナショナル・リーグが確立するとともに、その地域のプロ・サッカーチームも成り立っています。

    さて、共通のルールを備えた近代スポーツとしてのサッカーの誕生と、その後の国境を超えてチームを点々としていくような「移動する選手たち」の動向については、英語圏では歴史的な観点から研究が行われています。代表的なものとしては、Pierre LafranchiとMattew Taylorの共著 "Moving with the Ball"(2001) があります。また、サッカー選手を労働者として捉え、その特徴について考察した研究もあります。代表的なものは、Martin Roderick "The Work of Professional Football: A labour or love" (2006)があります。また、95年のボスマン裁定は選手とクラブ、地域との関係を大きく変え、選手の動きの流動化が進むことになりました。サッカー選手は高度・特殊な技能を持った移民労働者として捉えられるようになったわけです。

    今回の報告で山本さんが注目したのは、Jリーグの外国籍選手です。93年の開幕以来、Jリーグ(J1)に在籍した「全て」の外国籍選手を取り上げ、この選手たちの国籍、ポジション、Jリーグ登録前に所属していたチームの経歴、そしてJリーグの登録抹消後の所属チームの経歴などを洗い出したデータを準備いただいて、ご報告を行っていただきました。準備いただいたデータを参考にして、Jリーグを選手たちのグローバルな移動の中の「経由地」「中継地点」「通過点」として捉えて、選手たちはどこから来て、どこへ行くのか、どのような経路を通っているのか、どれくらいの規模の移動があるのかといった点に注目しながら、サッカー選手の移動の特徴や、移動の中でのJリーグの特徴などについて議論を進めていただきました。

    参考として、少しデータを紐解いてみると、1993年の開幕以来、Jリーグ(J1)に在籍した外国籍選手の人数はおよそ800名。うち、国籍で見ると、ブラジル国籍の選手がおよそ500名を占めてトップ。次に韓国籍がおよそ80名で続きます。ブラジル籍選手の圧倒的な人数には参加者の方から驚きの声が上がりました。

    検証例としては次のような論点が挙げられました。まず、最近しばしば指摘される、経済的に力のある中東のリーグへ、Jリーグから選手が流れているという論点について。例えば、500人近いブラジル籍選手を見てみると、Jリーグから直接中東へ、という例は多くはないようです。そのかわり、Jリーグから南米へ戻って中東へという例は多く見られますし、南米のリーグを中心にチームを転々とするという例も多く見られました。

    近年では韓国から新卒の形でJリーグに来てプロキャリアをスタートするという例が多く見られるようになってきました。これは「アジアサッカー連盟(AFC)加盟国の国籍を有する選手1名」までは外国籍選手の登録数(5名まで)の制限を摘要しない「アジア枠」が大きく影響していると思われます。また、マンチェスター・ユナイテッドに所属するパク・チソンのような、Jリーグからヨーロッパへとステップ・アップする選手が注目されていますが、韓国からJリーグへ来てヨーロッパへ移動する選手は少なく、韓国と日本の間を往復するというケースが多いようです。

    上記の「アジア枠」に関連することでは、2006年にAFCに加盟したオーストラリアの国籍の選手の動向が、今後注目すべきケースとなりそうです。今回はJ1のみにしぼっての考察となりましたが、J2を入れた場合はどのような傾向が見られるのか、また、指導者についても考察の対象とすると何が見えてくるのか、という点も興味深いものと思われます。

    今回の報告では実行委員長の小笠原先生、事務局に参加されている藤田智博さん(大阪大学)をはじめ、みなさんから貴重なご意見をいただきました。また、山本さんの緻密なご報告で大いに研究会を盛り上げていただきました。ありがとうございました。


    なお、当日配布した参考資料(PDF)は下記からダウンロードできます。
    http://bit.ly/jj0rue (skydrive)

    Jリーグでの外国籍選手の登録の規定については、下記リンク先の1-5をご覧ください。


    藤墳智史(ブース担当)

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